福建土楼 中国の風景
皆さんは「集合住宅」と聞いてどんな建物を思い浮かべるでしょうか。人によって多少のイメージの相違はありながらも、その多くが団地、アパート、マンションといった角ばった大きな建物を思い浮かべるのではないでしょうか。「集合住宅」とは、文字通り「住宅」が「集合」している建物=多くの人が一つの建物に住む建築物で間違いありません。そして日本では主に団地、アパート、マンションなどを指す場合が多いでしょう。しかし、世界に目を向けてみると日本でイメージするのとは大きくかけ離れた集合住宅が存在します。その一つが、中国・福建省にある「福建土楼」と呼ばれる建物(住宅)です。
この「福建土楼」、黄河流域に住んでいた「客家語」を話す漢民族の住居であることから「客家土楼」とも呼ばれますが、その外観の特徴は巨大な円形をしていること。どれくらいの大きさかという建物によっても多少の差はありますが、その直径は30メートルから大きなところでは70メートル以上、3~5階建の高さにもなるという建物で、その中にそれぞれ部屋が区切られ、数十家族、200~300人ほどの人が暮らすという「集合住宅」なのです。
歴史的な経緯として外部の敵から身を守るという意識も高いため、壁は1メートル以上と分厚く作られており、巨大な建物の割には入口は1か所、窓も光を取り入れる為というよりあくまで空気の入れ替えの為の小さな窓が外に向けて作られている程度で、まるで要塞のようにも見える建物なのです。しかし内側は光がふんだんに入るように作られ、円形であることから見晴らしも良くなっていて、住居のほかに、家畜用のスペースが設けられていたり、皆で何かをするためのスペースが設けられている土楼もあります。小規模のものから大きなものまで「土楼」の総数は1万とも2万ともいわれていますが、中でも「福建土楼」はその歴史的な価値が認められ、世界遺産になっています。