初めてアムステルダムの写真を見たら、写真によってはまるで「おもちゃの町」にも見えてしまう、細くて可愛らしいビルが沢山並んだ光景。なぜ、これほどまでに間口が狭くて細長い建物が密接して立ち並んでいるのか、ご存じの方も多いかもしれませんが、これはアムステルダム(の旧市街)が今のような町並みになった近世の半ば頃、17世紀当時の課税方式と、その対策が理由なのです。そう、大航海時代を経てオランダが豊かになりアムステルダムが町としてどんどんと発展していった当時、政府は次から次へと建つ建物の存在に目をつけ、建物ごとにその間口の広さで税金を課すことにしたのです。貿易で富を蓄えた商人達が大きな家を建てることから、より大きな家にはより沢山の税金を、ということです。日本の建物や歴史について少し詳しい方なら、京都の間口税を思い起こす方もいらっしゃるでしょう。「税金は取れる所から取る」、いつの時代もどこの国の政府も考えることは同じですね。そして、当然といえば当然ですが、京都同様、オランダの市民たちも、「家を大きくして間口が広くなると税金が高くなるなら、間口を狭くして家を建てよう」ということになるわけです。そうして、表向きは「間口の狭い小さな家」、しかし実際は「奥行きがあって、通りからの見た目よりも中は広い家」が次から次へと建てられたのでした。当時の人たちの「少しでも税金を安くするための対策」の結果、今のようなキュートで素敵な町並みが出来上がったのかと思えば、興味深いですね。
写真は、そんなアムステルダムの穏やかな夜の運河沿いの家並みの風景です。ちなみにアムステルダムの町並みが「おもちゃの町」、もしくは「アニメの町」のように見えるのは、写真の通り、傾いている家が多いことも理由の一つ。アムステルダムの建物が傾いているのには、大きく二つの理由があって、そのうちの一つは地盤の緩さ。社会の時間に習ったことを覚えている方もいるかもしれませんが、アムステルダムの土地は、かつて湿地であった所を埋め立ててできた場所が多いのです。そのため、地盤が弱く、時間と共に傾いてしまう建物があるのだそう。そしてもう一つの理由、これは建物を正面にした時には気が付きにくいのですが、玄関を正面にして左右に傾いているのではなく、手前方向に傾いている建物もあるのです。これは、間口を狭くして建物を作ったために、大きな家具を上の階に運び上げるには外から吊り上げて運び入れるしかなかったのですが、その際に建物の下の方の壁にぶつかることが無いよう、上の部分が少し手前にせり出すような形で通りに対して建物に傾斜をつけたのです。そうすることで荷物を吊り上げても下の階の壁や窓にはぶつからなくて済むという訳。そしてもう一つ、間口が狭いため、上階の面積を少しでも広くしようとしたため、という理由もあるとか。いずれにしても、当時の人々の知恵と工夫の結果、という訳です。